キーイメージ
パート=ケプルが、アイスティのカットを映画フィルムに仕込む。
DVDチャプターリスト
(1)殺人写真 (2)映写技師の証言 (3)録音スイッチ (4)警部の買い物 (5)恐喝 (6)サブリミナル効果 (7)マグノリア劇場 (8)ゴルフ場での対決 (9)凶器を捜すには
犯行の動機
パート=ケプル(犯人)が社長をつとめるケプル研究所は、ヴィクター=ノリス(第1被害者)が社長をつとめるノリス産業のために販売促進用の映画をつくっていた。
しかし、ケプルとノリスは以前から敵対する関係にあった。そして、ノリス産業の社長ノリスは、契約先のケプル研究所を切り捨てる計画をもち、それを次の重役会で議題にするつもりである。
ケプルは、ノリスを殺害する準備をはじめる。
コロンボはいつどこでピンときたか
映写室で、映写技師のホワイトと話をしていたとき。
ケプルは、上映したフィルムを殺人事件のすぐあとに金庫にしまうように手配した。殺人があった直後だと、たいていの人はそこまで気がまわらないはずである。ケプルがあやしい。
犯行を裏付ける事実
犯行があった廊下をうつすモニターが犯行当時うつっていなかった。
試写室で映画を見ていた人たちからは、カーテンの陰になってケプルの姿は見えなかった。映画のナレーションは録音をながすことも可能だった(ケプルのアリバイは成立しない)。ケプルはいつも、映画上映後に参加者の感想を録音していたが、事件当時テープに録音されていたのは、ケプルが廊下にでてノリス(被害者)の死体を発見してからあとの会話だけであり、それ以前の会話はまったく録音されていなかった(死体を発見して大混乱のときに録音をはじめたというのは妙だ)。
ケプルは、「潜在意識のカット」(飲食物の写真をフィルムに仕込んで潜在意識を刺激するカット)をフィルムに入れることが可能だった(カットを挿入することにより、視聴者に気づかれないままメッセージをつたえることができる。これを「サブリミナル効果」とよぶ)。
検死の結果、ノリスは塩辛いキャビアを食べていたことがあきらかになった。
映写技師のホワイト(第2被害者)が殺された(真実を知ってしまったので殺害されたのではないか)。
ホワイト殺害現場に、フィルムが交換されていたのにコインがおちていなかた(ホワイトはフィルム交換の合図のために、フィルムのおわりの方にコインをいつもはさんでいたが、それがなかった。つまり別の人がフィルムを交換した。ホワイト殺しに関するケプルのアリバイは成立しない)。
ケプルは、関係があったタニア=ベーカーのことを知らないふりをした。
コロンボはいかにして決着をつけたか
映画を見ている途中であったが、ケプルは試写室を出て自分のオフィスへむかう。そして、ランプの傘の中にかくしてあったピストルの口径変換装置をとりだす。その瞬間、フラッシュが光る。コロンボがまちかまえていた。
コロンボは、上映されていたフィルムの中に、ケプルのオフィスを捜索している「潜在意識のカット」(コロンボの姿)を何枚も仕込んでおいた。ケプルは、映画を見ているうちに潜在意識を刺激されて、無意識のうちに、犯行につかった口径変換装置を確認する行動にでてしまった。
コロンボは、犯人が犯行に用いたのとまさにまったくおなじ方法をつかって犯人を誘導し、物的証拠を発見したのであった。
解説:ベーシック・コロンボ
「映画を見ている人間(ノリス)が途中で出てくるのを、どうして犯人は前もって知ってたんだろ?(You wonder how the murderer would know in advance, the guy who is watching a film in there would suddenly get up and come out here?)」
すべては、コロンボの素朴な疑問からはじまる。不審な点に気がつくかどうかが、その後の捜査と事件解決のすべて決すると言ってもよい。
その後コロンボは、事件のキーとなる疑問をカードに書き出し、ケプルにぶつける。「なぜノリス氏は部屋をでた?」「なぜ犯人は試写室を出る時間を知ってたか?」
さらに、「ノリスは塩辛いキャビアをたべていた」「試写室は暑かった」という事実から、ノリスは喉がかわいていたとかんがえられ、これらに、「潜在意識のカット」による効果がくわわれば、「ノリスが部屋をでて水をのみに行くことを犯人は予測できた」という仮説をたてることができる。この仮説により疑問は解消され、すべての説明がつく。つまり犯人は、映画フィルムに飲み物のカットを仕込んでおいて、ノリスの潜在意識を刺激し、彼に水をのみに行かせるように仕組んだということである。
コロンボは、さらに観察と聞き取りをくりかえし、仮説を検証していく。今度は、ただ調査するのではなく、仮説を前提にして調査をしている。たとえば、タニア=ベーカーに電話をしたときも、ただ電話をかけるのではなく、犯人の名前を名乗って相手の反応をしらべている。仮説をたてたあとは、相手に仕掛けながら捜査をすすめるのである。
そしてゴルフ場で、コロンボとケプルがふたたび対決する。二人の勝負は、ゴルフのショットの良し悪しと一体になってすすんでいく。
「先生が犯人だとおもうんです(I think you’re guilty of homicide)」(コロンボ)
「我が国の法律では物的証拠がなければどうにもならない(A court of law in this country still requires some kind of evidence)」(ケプル)
仮説を検証し犯人を特定することと、犯人を逮捕することの間にはハードルがあるのである。
「勝つには最後までゲームをすてないことだって(For a while there I thought I was going to spoil your game)」(コロンボ)
「その通りだ、コロンボ君(Not a chance, Lieutenant)」(ケプル)
ケプルはナイスショットをうち、コロンボは退散する。
その後、ふたたびケプル研究所にもどり、最後の山場がおとずれる。コロンボは、事件を解決するための手段として、ケプルがつかった巧妙なトリックをそのままつかう。
「私の方式をつかったから解決できたんだ(You never would have solved it without using my technique)」(ケプル)
「感謝状をあげたいくらいで(If there was a reward, I’d support your claim to it)」(コロンボ)
このような、犯人がつかったのとおなじトリックをつかって事件を解決する手法は、ほかのエピソードでも時々もちいられている。
この『意識の下の映像』では、疑問にはじまり、仮説形成、仮説の検証、アリバイ崩し、「逆トリック」による犯人逮捕という、コロンボが事件を解決していく全プロセスが非常にバランスよくわかりやすく提示されている。私たちは、コロンボと犯人の対決を通して、コロンボの推理と手の打ち方の両方をたのしみながら、捜査と事件解決の基本的方法をとてもよく理解することができる。その意味で、これはオーソドックスなエピソードであり、「ベーシック・コロンボ」とよんでもよい。
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