キーイメージ
ポール=ジェラードがフグの肝をつぶしている。
チャプターリスト
(1)フグは珍味 (2)おいしい捜査 (3)毒入りマルゴー (4)レストラン振興協会 (5)ヴィットリオの葬儀 (6)警部と小津さんと芸者 (7)謎の銀行口座 (8)おいしすぎるご招待 (9)料理対決
犯行の動機
有名な料理評論家ポール=ジェラード(犯人)は、レストランの評論によって、各レストランの評判を左右できる立場にあることを武器にして、レストランのオーナーたちを恐喝していた。
しかし、イタリアン・レストラン「ヴィットリオ」のオーナーであるヴィットリオ=ロッシ(被害者)は反旗をひるがえし、ポールとの取り決めを破棄し、ポールのきたない正体をすっぱぬいてやると言いだした。
ヴィットリオの口は絶対に封じなければならない。ポールは、ヴィットリオを毒殺する準備をすすめていく。
コロンボはいつどこでピントきたか
イタリアン・レストラン「ヴィットリオ」でポールにはじめて会ったとき。
ポールは、ヴィットリオが毒で死んだと警察から聞いて、まっすぐヴィットリオの店にかけつけてきた。しかしポールは、一緒に食事をした相手が毒殺されたというのに、医者もよばず、病院にも行かなかったし、応急手当もたのまなかった。普通なら、まず自分の命を心配するはずである。
コロンボは、この普通でない様子を見て、ポールが犯人だと直観した。
犯行を裏付ける事実
ヴィットリオは「レストラン振興協会」(ポールの口座)に多額の金をふりこんでいた。
ポールは、ヴィットリオが毒殺された直前に同席していた。ヴィットリオを毒殺した毒はフグの毒だった。ポールは、フグが毒をもつことを知っており、フグを入手する経路ももっていた。事件当夜、ポールは午後8時にヴィットリオに会って、8時55分までに空港にいく予定をあらかじめたてていた(そもそも、ヴィットリオと一緒に食事をする気などなかった)。ヴィットリオの店のワインの栓抜きの中にカートリッジが空っぽになっているものがあった(ポールは栓抜きをすりかえたが、カートリッジの中身の量までは計算していなかった)。ポールには、ワインの栓抜きをすりかえるチャンスがあった。
コロンボはいかにして決着をつけたか
コロンボは、最後に料理をつくろうと言って、ヴィットリオの店にポールをよび、料理をしながらヴィットリオ殺しの推理を話していく。
そして、ポールがワインを飲もうとすると、コロンボは言う。
「おっと!そいつはいけません。飲んじゃいけない。あなた、また栓抜きをすりかえましたね。でも私はグラスをすりかえた。(Ah! wouldn’t, sir. Don’t drink. You switched the openers again, but I switched the glasses)」
ポールは、フグの毒が仕込まれたワインの栓抜きをもってきて、店の栓抜きとすりかえ、それでワインをあけ、コロンボに飲ませようとした。つまりコロンボを毒殺しようとしたのである。
しかしコロンボは、ポールの行動を予見し、ポールのすきを見てグラスを入れかえておいた。つまり毒入りワインはポールの手元に行っていたのである。
「そいつは毒入りの分ですよ。あたしが飲むはずだったワインです。証拠って言うのはこうゆうのを言うんですよ(That’s the poisoned glass, sir, the glass I was supposed to drink. That’s what they call proof)」(コロンボ)
この毒入りワインが決定的証拠になった。
解説:事件解決の場をつくりだす
「いつから私に目をつけたんだね(When did you first suspect me?)」(ポール)
「やー、ほんと言いますとね、初対面の2分後からですよ(Well, as it happened, sir. About two minutes after I met you)」(コロンボ)
このエピソードでは、コロンボは最初に犯人を特定してしまっている。これは、ポールが犯人ではないかという疑いをもったというレベルではない。ほかのエピソードでは、まず疑問が生じ、捜査をすすめていくうちに犯人を特定していくが、今回は、最初の出発点において絶対的な確信をもつことができたのである。そういえばコロンボはつげていた。
「ポールさん、絶対あんたをにがしませんからね(Sorry, Mr. Gerard, but I can’t let you get away with it)」
そしてコロンボは、犯行の動機や事件の背景の捜査をすすめていく。
「少なくともあたしの経験じゃ、トラブルと殺人は切っても切れない仲なんでしてね(The two, trouble and murder, they seem to go together, at least that’s been my experience, sir)」(コロンボ)
コロンボは、ヴィットリオの店に不審な小切手があったことから「レストラン振興協会」や2つの銀行口座・謎の夫人の存在を発見し、レストランのオーナーたちとポールがつくりだすレストラン業界の特別な状況について気がついていく。事件は、犯人一人だけによってひきおこされるのではない。犯行の動機とそれを生みだした状況や構造、事件がおこった背景や場がかならず存在する。
その一方で、コロンボは言う。
「いったいどうやってワインに毒が入ったか? これが問題です。あたしこういうときにはね、車の中だの鏡だの、目につくところに問題かいて貼りつけて、ねてもさめてもそればっかりかんがえんです(How did the poison get into the wine? That’s the
qustion. But don’t worry about it sir, I’m going to write it out on a card, and I’m going to paste it up on my shaving mirror. And that’s all I’m going to think about)」(コロンボ)
私たち視聴者も、毒殺のトリックについてコロンボと一緒にかんがえていく。コロンボは、ヴィットリオの店で事件当夜の出来事を再現してみる。そこには、カートリッジ式(空気式)のワインの栓抜きがあり、毒が入っていたのはワインでく、栓抜きだったことに気がつく。
そして「最後の料理」の場面にいたるのである。
今回の事件では、ポールが犯人であると最初からあきらかだったので、コロンボは、事件の背景(状況)と毒殺(犯行)のトリックの解明に専念することができた。
そもそも事件とは、せまく小さくとらえれば、殺害現場における犯行そのものであるが、大きくとらえれば、犯行の背景や犯人をとりまく状況全体の出来事である。この事件では、毒殺が犯行であり、レストラン業界が全体になっている。人間の行動は、それ自体が単独で生じるのではなく、全体的な状況(場)の中で生じるのである。つまり事件には、犯行現場と全体状況という「二重構造」がそもそも存在する。局所と大局と言ってもよい。コロンボは、局所と大局の両方をただしく見つめ、それぞれを解明した。
またコロンボは、その作業をすすめながら、ポールを次第においつめていった。ポールは、おいつめられていたからこそ、コロンボを毒殺しようという犯行におよばざるをえなかった。コロンボは、「最後の料理」の前提として、犯人にそうせざるをえない状況(場)を意識的につくりだしており、このような状況があったからこそ、「最後の料理」は成功したのである。
ポールをおいつめる作業自体は、大きな状況(場)をあらたにつくりだす作業になっていたが、最終局面は、あらたな「犯行現場」をつくりだす結果となった。つまり「最後の料理」は、大局のもとでの局所ということになり、全体状況の中で犯行がおこるという事件の「二重構造」をここでもう一度みることができる。
犯人がコロンボを殺害しようとする前代未聞の殺人未遂事件を、コロンボはあらかじめ察知していたと言うこともできるが、もっと積極的には、そういう「事件」をおこさせるような場をコロンボは意識的につくりだしていた。コロンボは、毒殺事件を解明しながら、一方で、あらたな「事件」をつくりだし、本来の事件を解決してしまった。こうして、犯行がおこった現場は、事件を解決する現場にもなったのである。このエピソードには、事件を能動的実践的に解決するコロンボの「場づくり」のうまさがあらわれていた。
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